会社をダメにする「困った社員」はこの6タイプだ
たとえば、評論ばかりで何もしない人材だ
長年にわたり、小売業を中心に人材育成とチームビルディングに携わり、現在はオートバックスセブンの執行役員を務める小曽根憲氏は、「どうすれば、プロスポーツチームのような強いチームをつくれるか」を探ってきた。そんな中、組織を弱体化させる人材にはパターンがあることを発見した。その6つのタイプと、それぞれの人材への対応策を、特別に明かしてくれた――。
強いチーム作りを阻む、困った人材たち
小売業で、店長や店舗スタッフとして働く人材には、強いチームづくりに貢献してくれるタイプと、組織を弱体化させる人材タイプがそれぞれ存在する。後者は6つの特徴を持っており、それぞれの頭文字を取って「HELP ME」と名付けている。そのうち4つのタイプはすでに顕在化してしまったグループ、残り2つタイプは予備軍だという。
(1)H=評論家
評論ばかりして自分は何ら実践せず、グズグズする人材が「H」だ。すぐに実践して成果を出す人材にとっては不愉快な上に、新たにチャレンジしようとしている周囲の人材まで萎縮させてしまう。場合によっては汗をかいて実践している人材より、評論している人材の方が偉いと錯覚させる風土を醸成してしまう。「H」タイプの人材は、成功体験が希薄なのに知識だけは豊富な勤続年数の長い社員や、入社早々の若手社員にも存在する。評論家社員には、「自分でもやってみなさい」とチャンスを与えると、自分の力量を思い知って態度を改めることがある。
反対に、知識は少なくても実践して失敗と軌道修正を繰り返しながら成果に辿り着くタイプは、論理的思考力が足りず、また会議で上手くプレゼンテーションができなくても、愚直に実践し続けて前例がない成果を出してくれることがある。評価されていなかった社員のキャリアが一気に開花し、マネジメントに昇格して次なるステージへ進む社員が存在する。実は、こうした社員が組織を強くする。
(2)E=エスケープ
新しい取り組みや責任のある仕事から逃げてばかりいて、最小限の仕事しか請け負わない人材が「E」だ。このタイプは組織内に停滞ムードを広め、マネジメントが手を焼く存在だ。とりたてて成果を出さず、「もともとやりたいこととは違った」などと言って、次々と転職を繰り返すケースも多い。そのような「E」タイプの人材には、一度成功体験を積ませると様変わりすることがある。立ちはだかる課題から逃げず、次々と乗り越えて行く人材は、組織の課題解決力を引き上げ、組織にチャレンジ精神を広めてくれる。
(3)L=LOVE ME
自分のことが大好きで、自慢話ばかりを周囲にするのが「L」だ。さらに承認欲求と自尊心が強い人だと、組織が自分を正当に認めてくれない不満を周囲に撒き散らす。最後には「誰々が悪い」と他人に転嫁し、組織内に抵抗勢力を生み出してしまう。こうなるとチームビルディングは難航するので要注意だ。事態の悪化を防ぐには、「I LOVE ME」ではなく「WE LOVE US」という組織風土にすることが、健全化に向けた第一歩になる。
(4)P=プライベート
自分の機嫌が悪いことを周囲に撒き散らす社員、業務内容や活動状況を誰にも明かさずブラックボックス化させる社員、好き嫌いで人事評価をするマネジメント層など、プライベートを職場に持ち込む「公私混同」の人材が「P」だ。このタイプは組織を不健全にする。このタイプには、会社が株主のものであることを理解させ、職場は給与を受け取る見返りに成果を出す場所だと認識させる。公私混同をさせないことが肝心だ。
HELPが蔓延していないか、いつもチェックを
以上の4タイプを、小曽根氏は「ダークサイド」と呼んでいる。とくに承認欲求が強い「LOVE ME」のタイプは、加速度的に増殖する傾向があり、気づくと組織の半分近くが「HELP人材」で埋め尽くされてしまう場合もある。そうなるとSF映画のように、チームは「暗黒の世界」に転落してしまう。
まず、「HELP」は誰もが持ち合わせている人間の弱さであり、この気質を職場で出すか出さないかだけの問題だと捉えたい。この気質が職場で出過ぎると、評論ばかりして何も実践しなかったり、逃げてばかりで何ら成長できなかったり、承認欲求が強く必要以上に不満を溜め込んだり、その日の気分やプライベートな要素を職場に持ち込んで周囲に不快な思いをさせたりと、強いチーム作りを阻む社員になる。
マネジメント層は「HELP人材」が組織内に蔓延っていないかをチェックし、反対の人材タイプを割合的に増やすようにしたい。とにかく「HELP」は許さないという強い意志を、組織全体に示すことが肝要だ。
この2タイプなら、まだ救える
大抵の場合、「HELP」を顕在化させてしまった社員のマネジメントは難しいが面があるが、次の「M」と「E」はダークサイドに陥らないようにサポートすれば、「人間の弱さ」をきちんと克服できる社員にステップアップする可能性を持つ。
(5)M=悶々と働く
心の中で思い悩むことを抱えながら働いているタイプが「M」だ。こうした人材は負の感情をチーム内ですぐに吐き出してしまう。やる気のある人材の意欲を削いでしまうことにつながる。
(6)E=延々と働く
真面目に働こうとすればするほどこのパターンに陥りやすく、新たにマネジメント職に就いた新任店長や入社早々の新入社員などに多く存在する。ストレスや不満の感情を溜め込む前に、定期的に吐き出す場所をマネジメント側が提供し、メリハリを付ける習慣を持たせるように働きかけることが必要だ。
社員の評価は「本人の貢献+周囲に与える貢献」
社員が組織にもたらす貢献には、社員本人の貢献ポイントと社員が周囲に与える貢献ポイントという2つの領域がある。社員本人の貢献ポイントがいくら高くても、周囲に与える貢献ポイントが低い、あるいはマイナスの影響をバラまく人材が存在する。反対に、社員本人の貢献ポイントは高くないが、周囲に与える貢献ポイントが著しく高い人材が存在する。
前者は社員本人の貢献ポイントが仮に100点中80点だとしても、周囲の人にマイナス5ポイントを10人に与えると30ポイントの貢献でしかしないが、本人は80ポイント貢献していると勘違いする。後者は本人の貢献ポイントが100点満点中60点だとしても、周囲の人にプラス5ポイントを5人に与えれば、85ポイントの貢献が組織にもたらされる。
前者の人材が多いチームは崩れやすく、後者の人材が多い組織はチームビルディングが進みやすい。前者の人材タイプには「HELP」の兆候が見受けられ、とくに「LOVE ME」のタイプが多い。
採用の段階から、チーム作りは始まっている
強いチームが誕生すると、メンバーが組織統制や事業収益を改善させようと取り組み、各自が自転し始める。事業責任者が最初に取り組むべきことは、チームビルディングを完成させる仕組みづくりだ。小売業の場合なら、本部のマネジメントはまず店長を育てるように取り組み、その店長が販売スタッフを育てるための支援を全面的にバックアップする。さらに、店長同士が切磋琢磨しあえるように、社内環境を作り出すといった順序だ。
何より重要なのは、人材採用の面接時に、エントリーしてきた人材が「HELP気質」を持っていないかどうかを見極め、入口から制することが何より必要だと、小曽根氏は指摘する。