マーケティングのジレンマ・・・・No.62 Amazonが狙う次の市場
これまでアマゾンは様々な業界を取り込み、「アマゾン・エフェクト」と呼ばれる業界の再編を行って来ました。中でも規制に守られていた業界は規制緩和が加速すれば、今後業界の再編の流れは避けられなくなります。そこでアマゾンが狙っている市場と業界があります。
Amazonが狙う次なる市場は、薬局市場
Amazonが狙う次なる市場は、食品、中小企業向け融資、物流、生鮮食品、決済サービスなどといわれています。中でも彼らが現在注力しているのが、薬局の市場です。
Amazonは2018年6月にピルパックという企業を買収し、2020年11月からAmazon薬局を開始しています。ピルパックとは、医薬品の個別配送サービスで知られるアメリカのオンライン薬局です。服用するタイミングが同じで、しかも複数の薬がある場合、これらを1つの個包装にまとめ、曜日や服用時間帯毎に仕分けして配送する独自の仕組みを売り物にしています。
一般的に薬局から薬を受け取る時は、薬の種類毎に袋にまとめて入れて渡されます。しかしピルパックは、薬の種類毎でなく「朝、服用する薬」「昼、服用する薬」「夜、服用する薬」といった具合に、薬を服用する場面毎に小分けしたものを一包化して届けてくれます。これは多種類の薬を服用することが多い高齢者が、間違って服用することを防ぐためです。
Amazon薬局は、処方せんの管理から薬の注文、購入、そして各種保険の登録などを全てオンライン上で行うことができ、必要な薬を顧客のもとに2日以内に配送します。18歳以上のAmazon会員から利用でき、プライム会員の配送料は無料です。有料のオプションサービスとして、オンラインヘルプや電話によるカスタマーケアにアクセスができ、薬剤師による24時間年中無休の電話相談も用意しています。Amazonですから、薬と一緒に食品や雑貨の同時購入も可能です。
アメリカ国内に留まらず、インドではすでにAmazon薬局が市販薬と医療用医薬品の配送を開始しており、イギリス・カナダ・オーストラリアにも進出する動きがあります。
日本ではコロナ禍により、医療機関の受診率が低下し、病院や薬局の利用者が減少しました。それと同時に、オンライン診療やオンライン服薬指導へのニーズが高まり、厚生労働省は予定を前倒ししてオンライン服薬指導を解禁。非対面で医師や薬剤師と面談できるオンライン診療・オンライン服薬指導が開始されています。
日本には約7兆8,000億円に上る調剤医療費市場が存在しています。Amazonは日本では電子処方箋の運用が2023年から始まることを受け、本格的なサービス開始を目指しています。当面アマゾン薬局は直接販売はせず、中小薬局と組んで新たなプラットホームをつくるようです。
オンライン診療とオンライン服薬指導が普及していけば、Amazon薬局にはさらに追い風になります。書店市場が代替されたように、Amazonが次に覇権を握るのは、薬局市場になるかもしれません。
画像は Amazon Pharmacy から転載