人は誰も安さに惹かれます。安さを売り物にする企業の中には、安くするために店舗などには徹底してお金を掛けず、販売価格を下げることだけに注力することがよくあります。ところが一時期は繁盛しても、こうした企業が長続きしない事例を散見します。一体どこに盲点があるのでしょうか。
「安さの裏に潜む、生活者の満たされない気持ち」を払拭することが成功の秘訣
可処分所得が増えなければ、支出できるお金には限りがあります。そのため自ずと安いモノやコトの需要が増えます。
その一方、人間は安いモノが持つ記号(コード)には、「爪に火を点す」イメージが内在するため、精神的にどこか満たされない気持ちを引きずります。制約を受ける消費行動に潜んでいるストレスと、言い換えることもできます。
マスマーケットで支持を受けている企業群を見ると、そうした負の顧客心理を払しょくする価値を創造していることがわかります。
例えばユニクロで買物をして、入手した商品を身に着けても、そこには「爪に火を点す」という顧客心理は存在しません。また無印良品の生活雑貨や収納用品も単に手頃な価格というのではなく、「これでいい」と納得する要素を備えています。ZARAも、リーズナブルな価格でファッション性を備えていますが、購入した人に満たされない気持ちなど与えません。不動の人気を誇るサイゼリヤもこの要素を満たしており、リーズナブルな価格でありながら、価格以上の満足感を私たちに提供してくれます。
安さを売り物にする企業の中には、安くするために店舗などにはお金を掛けず、商品価格を下げることだけに注力する状況をよく見かけます。
一時期は繁盛しても、こうした企業が長続きしないのは、「飽きられる」要素に加え、安さだけに惹かれてしまう行動に、顧客はどこかに満たされない気持ちを引きずっていることにも要因があると思います。安さだけを売り物にして人気を集めながらも、次第に衰退していった企業や商品は、「安さの裏に潜む、生活者の満たされない気持ち」を払拭できなかったことが指摘できます。
リーズナブルというメリットに加え、「心理的に手が届く豊かさ」を顧客に感じてもらう要素を備えていることが、マスマーケットで成功する条件のひとつではないでしょうか。