マーケティングのジレンマ・・・No.14ーA リーダーに挑むのではなく、リーダーとは戦わない戦略が存在する(3回シリーズ)
企業はその規模によって、自社の強みを発揮できる市場が異なる。差別化は業界のリーダーと戦う戦略で、企業規模が互角の場合に有効だ。だがニッチはリーダーとは戦わず独自の市場をつくり、その市場で圧倒的な強さを発揮する戦略だ。
企業には、その規模に相応しい戦略と市場が存在する
マーケティングの書籍に事例として登場する企業は、書き手が経営内容を把握しやすい大企業が多くなる。そのためスタートアップ企業や中小企業にとっては身近でない事例と感じられる場合がある。
企業規模は限られていても、個性を生かして高収益を上げる企業は国内に数多く存在している。近年はマーケット・リーダーである大企業でも経営基盤が揺らぐ事態が頻発しており、マーケット・ニッチャーが戦略の選択肢として取り入れる視点が必要だと酒井はかねてより考えていた。そんな中で山田英夫早稲田大学ビジネススクール(大学院商学研究科)教授は、マーケット・ニッチャーに対して戦略として10視点を、DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューで以下のように解説している。
差別化はリーダーと戦う戦略であり、ニッチはリーダーとは戦わない戦略だ。また差別化はリーダーとの違いを強調することで、シェアを奪うのが目的だ。一方ニッチ戦略はリーダーの地位を狙うのではなく、限られた市場において、利益を上げていく戦略だ。一般にコスト・リーダーシップは業界で最大のリーダー企業が採れる戦略、差別化はリーダーの座を狙うチャレンジャー企業の戦略、そして集中がニッチ企業(ニッチャー)の戦略と言われる。
<山田教授によるニッチの分類>
①技術ニッチ
技術ニッチとは、リーダー企業が技術を持っていない分野を開拓する戦略を指す。眼科領域に特化した参天製薬、歯科用医療機器のマニーなどがある。
②チャネル・ニッチ
チャネル・ニッチとは、リーダーが追随できないチャネルをおさえ、それを通じて限られた市場の寡占を作る戦略である。税理士ルートをおさえた大同生命、全国のバレエ教室ルートを疑似チャネルとしておさえた、バレエ用品のチャコットなどがその典型例だ。
③特殊ニーズ・ニッチ
特殊ニーズ・ニッチとは、一般的ではない特殊なニーズに対応した技術・サービスにより、限定された市場を獲得する戦略だ。タクシーの自動ドアに特化したトーシンテック、理容・美容用椅子に特化したタカラベルモントなどがある。
※画像は独立行政法人 中小企業基盤整備機構のサイトから引用
(続く)