マーケティングのジレンマ・・・No.14ーC リーダーに挑むのではなく、リーダーとは戦わない戦略が存在する(3回シリーズ完結)
山田英夫早稲田大学ビジネススクール(大学院商学研究科)教授は、マーケット・ニッチャーの戦略としての10視点を解説している。大企業や競合企業が容易に参入できない独自の市場を育てた企業がいかに強いか。ぜひ参考にして欲しい。
価格競争に直面している企業は、自社がビジネスしている市場を見直すことだ
差別化はリーダーと戦う戦略であり、ニッチはリーダーとは戦わない戦略だ。また差別化はリーダーとの違いを強調することで、シェアを奪うのが目的になる。ニッチ戦略はリーダーの地位を狙うのではなく、限られた市場において、利益を上げていく戦略だ。山田英夫早稲田大学ビジネススクール(大学院商学研究科)教授は、マーケット・ニッチャーに対して戦略としての10視点を、DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューで以下のように解説している。
<山田教授によるニッチの分類>
⑧限定量ニッチ
限定量ニッチとは、生産・供給量を意図的に絞ることでプレミアム感を出し、利益を確保する戦略だ。ボリューム・ニッチと限定量ニッチの違いは、前者は市場規模自体が小さいケースを言うのに対して、後者は事業的には量産が可能にもかかわらず、戦略として供給量をコントロールし市場規模を小さくとどめ、利益を獲得しようとするものだ。
古くは老舗の菓子、日本酒など原材料の確保や職人の生産量がネックとなる分野でとられてきたが、最近は嗜好性の強いフィギュアやコインなどでも取られる。量産の効く分野でも、数量を限定することによって希少ニーズを喚起する意図もある。最近の失敗例として、JR東日本の記念スイカの例がある。
⑨カスタマイズ・ニッチ
カスタマイズ・ニッチは、完全オーダーメイドに基づく製品・サービスを提供する戦略だ。事例として銀座山形屋の注文服がある。
⑩切替コスト・ニッチ
製品・サービスの規模が小さいだけでなく、当該市場に参入するための障壁があり、既存客が製品・サービスを切替えるコストが大きい場合、リーダー企業は同質化を仕掛けにくい。こうした戦略を、「切替コスト・ニッチ」と呼ぶ。クオリカプスが製造販売するハードゼラチンカプセルやHPMCカプセル、カプセル充填機、シール機など製剤関連機器、ホギメディカルの手術キット製品などがある。
(3回シリーズはこれで終了)