マーケティングのジレンマ・・・No.15ーA 世界で評価される日本の食文化だが、そのビジネスは熾烈だ
日本の外食産業は市場規模に対して店舗が過剰で、過当競争を招いている。そのわけは、日本のビジネスパーソンの実質賃金が下がっているため、値下げ競争が激しさを増しているからだ。これが業界の低収益と賃金の安さに繋がっている。
日本の外食産業は市場規模に対して店舗が過剰で過当競争を招き、これが業界の低収益と賃金の安さに繋がっている
「モノが安価になるのは、いいことだ」と考える人がいるが、それはある意味で危険な発想だ。モノの値段が下がり続けると経済はデフレになり、働く人の給与は下がり、購買力が低下してさらに販売価格を下げるという悪循環に陥るからだ。
競争相手が山ほど存在し、競争が熾烈で、値上げもままならない典型的なレッドオーシャン市場といえば外食産業だ。「新規開業パネル調査(日本政策金融公庫)」によると、調査期間の5年間(2011年から2015年)の全業種の廃業率平均は10.2%だが、飲食店・宿泊業の廃業率は18.9%と高率だ。
2017年の外食産業の市場規模は25兆6,561億円(2018年7月日本フードサービス協会の推計)だが、売上高トップのゼンショー(すき家やなか卯を運営)の売上高は5,400億円で、市場全体から見ると2.4%のシェアに過ぎない。外食産業の上位10社の企業の売上を合算しても2.2兆円で、市場全体の8.7%のシェアにしかならず、この市場には毎年数多くの新規企業が参入するが、その一方で競争に敗れた企業は退出していく。
飲食市場がし烈な理由、それはこの業界の厳しさを知らぬままに、新規参入する人が後を絶たたず、失敗して撤退しても、すぐに別の新規参入組が現れるからだ。飲食ビジネスは設備投資がかかり、立地に左右され、一度その場所に出店したら容易に転居はできない。家賃を払って人を雇えば当然コストはかかる。コストをまかなうために料理の価格を高くしようとしても、安価な料金で提供する競合店舗が多いためにままならない。競合する相手は飲食店だけでなく、コンビニエンスストアに代表される弁当惣菜類もある。さらに生活者はすぐに飽きるので、人気が出たからといって、永続するわけではない。いくら参入障壁が低くても、この業界で生き残って収益を上げるのはたやすくはない。
レットオーシャンばかりの日本で、どんな企業がブルーオーシャンを見つけ、競合がいない独自のビジネスを生み出したのか?
それは次回紹介する。
(続く)