マーケティングのジレンマ・・・・No.27 顧客の経験という視点から、サービスを価値化する
経験価値のマーケティングを実践すると、価格訴求による低収益体制から脱却し、他社にない魅力を備えることが可能だ
経験価値(カスタマー・エクスペリエンスとも呼ぶ)とは、モノやコトの価値や金銭的な価値ではなく、利用経験を通じて入手できる感動や喜び、満足感、効果などの心理的・感覚的な価値のことです。
コロンビア大学・ビジネス・スクール教授のバーンド・H・シュミットが提唱したのが『経験価値マーケティング』です。経験価値(カスタマー・エクスペリエンスとも呼ぶ)とは、モノやコトの価値や金銭的な価値ではなく、利用経験を通じて入手できる感動や喜び、満足感、効果などの心理的・感覚的な価値です。
シュミットは経験価値には次の5つの要素があると指摘しています。
●SENSE(感覚的経験価値)
人間の五感(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)を通じて訴えかける経験で、音楽や香り、商品デザインなどを通じた経験が該当します。
●FEEL(情緒的経験価値)
顧客の感情(喜怒哀楽)に訴えかける経験で、前向きな気分になる喜びや誇りを感じさせる経験が該当します。
●THINK(知的経験価値)
顧客の知性や好奇心に訴えかける経験で、企業の理念や商品コンセプトなどを伝えて共鳴してもらうといった経験が該当します。
●ACT(行動的経験価値)
新たなライフスタイルを提案し、行動に訴えかける経験のことで、新しい食生活や新たな時間の活用方法などを経験してもらうことが該当します。
●RELATE(関係的経験価値)
特定の集団やグループ・文化などへの帰属意識に訴えかける経験で、ボランティア活動・エコ・ブランドを持つ喜びなどを経験することなどが該当します。
これまで生活者が求めるのは、ニーズを充足する商品の機能とその便益(ベネフィット)だとする考え方でしたが、生活者の価値基準や判断基準、購入に至る意思決定は、単にニーズを満たすだけでなく、人間としての感覚や情緒といった要素も重要になってきたわけです。そこで商品デザインやクオリティ感の演出といった要素が必要になり、サービスも単にニーズが満たされるという結果価値だけでなく、経過価値(プロセスの価値)が重視されるようになっています。
経験価値を加味した商品・施設としては、
●握ぎってその感触を楽しむCAOMARU
●エレベーターの空間内にフレグランスが香るシステムが装備されている資生堂汐留オフィス
●「本のある暮らし」をテーマに、図書館を併設している『ホテル箱根本箱』
●“glamorous”と“camping”を組合わせた造語で、 贅沢にアウトドアでグランピングを愉しめる星のや富士
●旧小笠原伯爵の住まいをレストランとブライダル会場として蘇らせた小笠原伯爵邸
などがあります。
ウィズコロナの時代では、出張などB2B需要を想定して効率だけを追求すると価格競争に巻き込まれ、価格の安さだけで選ばれて低収益に悩まされます。他社にない魅力を考える時、経験価値を踏まえることが力になります。