マーケティングのジレンマ・・・No.4 単なる摸倣では、成功しない
先発商品の模倣で終わらず、独自性を発揮するには、どうすればいいか。そのヒントがここにある。
20世紀に日本でも横行し、現在はアジア企業を中心に行われている先発商品やトップ商品の模倣だが、単に売れている商品を真似するだけでシェアが取れるわけではない。模倣でなく、どう独自性を発揮するか。そのヒントはポジショニングとコンセプトの設定にある。
レッドブルは、リポビタンDを製造販売している大正製薬の創業者が長者番付で1位であることを知った時に始まった
レッドブルが市場を創造できた理由は、単なる摸倣ではない
国内の栄養ドリンクは、医薬品医療機器法(旧薬事法)の下で効果をうたえる「ドリンク剤」と、医薬品成分を含まない清涼飲料水の扱いとなる「エナジードリンク」の二つに大別される。代表的なドリンク剤は、1962年に日本で初めて発売された大正製薬のリポビタンD(指定医薬部外品)で、世界12ヶ国(同社HPより)で販売され、年間に8億本以上生産し、発売から57年(2019年段階)を迎える超ロングセラー商品だ。
大正製薬ホールディングスの2019年3月期のセルフメディケーション事業(OTC)事業の売上高は、1,801億円で、リポビタンシリーズの売上高は520億円(構成比28.9%。そのうちリポビタンDは334億円(構成比18.5%)だった。だが2000年3月期には同シリーズの単体売上は972億円(2017年6月14日エキサイトニュースより)で、ピーク時より452億円(53,5%)減少している。2017年度の栄養ドリンクの市場規模を見ると、ドリンク剤は1,723億円で2007年より2割減ったが、エナジードリンク市場は2007年からの10年で急速に拡大し、814億円(調査会社インテージ調べ)に拡大している。
日本はもとより世界でエナジードリンク市場を牽引しているのはRed Bullだ。Red Bullは2018年時点で68億本を171ヶ国で販売し、グループ売上高は55億4,100万ユーロ(1ユーロ121円換算で6,704億6千1百万円)従業員数12,239名を雇用する。
レッドブルの創業者ディートリッヒ・マテシッツ氏は、ユニリーバの子会社ブレンダックスでマーケティングを担当していた。1982年に香港のマンダリンオリエンタルのバーに彼が居た時に、大正製薬の創業者が日本の長者番付で1位で、リポビタンDを製造販売していることを雑誌「ニューズウィーク」で知った。これがレッドブルの始まりだ。レッドブルは「マイナスの状態をゼロにする」疲労回復の位置づけではなく、「ゼロの状態からプラスにして」パフォーマンスを向上するエナジードリンクのポジションに設定した。
レッドブルは先行する商品に対して、独自のポジショニングとコンセプトにより成功した代表的な成功事例だ。