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マーケティングのジレンマ・・・No.70 航空会社はマイレージプログラムによって「片手間に飛行機を飛ばす金融機関のような存在」になった

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コラム リンクトイン

日常の買い物も航空会社と提携したクレジットカードを利用し、特典航空券を獲得するためにせっせと「マイル」を貯める。あるいは航空会社の「ステータス」を維持するために、高い年会費を払って提携カードを持っている。こうした地道な取組みを生活者がしているその裏で、航空会社はマイレージプログラムを金のなる木に変えてしまいました。

スカイマイルは「頻繁に飛行機を利用する人」のものではなく、「大金を使う人」のためのプログラムになった

アメリカのデルタ航空は2023年9月、マイレージプログラム「スカイマイル」のサービス内容を変更すると発表しました。

これまでの利用金額と飛行距離の組み合わせに応じてステータス(上級会員資格)を付与する方式ではなく、利用金額に基づいた付与に切り替え、ステータスの取得に必要な利用金額を引き上げるという内容に変更したのです。

この仕組みに変わると、スカイマイルは「頻繁に飛行機を利用する人」のものではなく、「大金を使う人」のためのプログラムになります。

航空会社は提携したクレジットカードを通じて、顧客が支出するカテゴリー項目と支出金額の大部分を閲覧することができ、これらのデータを活用すれば新たなビジネスに繋げることができます。

マイレージプログラムは、航空会社はコストを掛けずにポイントをつくり出し、提携したクレジットカードを発行する銀行に対して、有料で販売します。銀行は利用額に応じたポイントをカード所有者に付与し、銀行とクレジットカード会社はどちらもカードの利用手数料から収益を得ています。

航空会社はポイントが交換されるまで、ポイントによるコストは発生しないところがロイヤルティプログラムの最大のメリットです。

ちなみにデルタ航空が提携するアメリカン・エキスプレスのクレジットカード利用者だけで、アメリカの国内総生産(GDP)の1%近くが利用しています。

イギリスの「フィナンシャル・タイムズ」が2020年に分析したデータによると、ウォール街の金融機関は大手航空会社のマイレージプログラムは、会社そのものよりも高く評価しています。例えばユナイテッド航空の「マイレージプラス」プログラムは220億ドルと評価していますが、当時の同社の時価総額は106億ドルに過ぎませんでした。

マイレージプログラムの進化は、航空会社を「片手間に飛行機を飛ばす金融機関のような存在」に変質させたわけです。

 

参考資料:クーリエ・ジャポン1/8(月) 配信 「銀行化する航空会社 マイルはこうして「お金持ち」だけのものになった」