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マーケティングのジレンマ・・・No.81 最低賃金が上昇しても、生活が次第に苦しくなり経済が回らなくなるオーストラリアの懸念

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コラム リンクトイン

賃金が上がるのは嬉しいのですが、日本企業の収益性が高まらないまま、過剰な物価高に社会が見舞われると、私たちの日々の生活は厳しくなります。利益率の低い企業は、人件費の負担が増えると事業を継続できなくなるからです。そのためロボットやITを活用して人を雇用しなくて済む取組みが加速すれば、失業率が上昇する懸念が生まれます。実はこの状況がオーストラリアで生じ始めています。

賃金が上がると労働集約型産業は人件費の負担が大きく、閉店や事業を止める企業が増えて、失業者が増える

6月3日にオーストラリアのフェアワーク・コミッション(公正労働法の下に設置された公正な労働を裁定する独立機関)から「最低賃金」の改正が発表され、2024年7月からは昨年より3.75%アップした「24.10オーストラリアドル(約2,510円)」になりました。

この金額はイギリスの最低賃金11.44ポンド(約2,287円)やアメリカニューヨーク州の15ドル(約2,360円)よりも高く、同州内にあるニューヨーク市の16ドル(約2,516円)とほぼ同額です。

24.10オーストラリアドルはオーストラリアの標準的な最低賃金で、この額を下回ってはいけないという基準です。オーストラリアでは、業界や職種ごとに最低賃金が定められているため、大部分の職種ではこの金額以上の賃金にすることが義務となります。賃金が高いことに釣られて、日本の若者たちの中にはワーキングホリデーを利用してオーストラリアに来る人がいます。

賃金が上がると、すべての物価は連動して高くなります。飲食店のようなサービス業などの様に労働集約型産業では人件費の負担が大きいため、閉店する店舗や事業を止めてしまう企業が増えています。その結果、失業者が増えることになり、オーストラリアの失業率は実際に上昇しています。

賃金が上がっても、生活が次第に苦しくなり、このままでは経済が回らなくなるのではないかという懸念がオーストラリアで暮らす人の中に広がっています。

日本でも賃金を上げる動きが高まっていますが、企業は収益性が高い事業に転換し、政府は過剰な物価高を抑制する動きを取らないと、私たちの日々の暮らしに大きな影響が出てきます。