マーケティングのジレンマ・・・No.83 中高年のデジタル落人が存在する一方で、デジタルを使いこなす「デジタルシニア」が注目されるわけ
どんな生活者が消費活動を積極的に行うかを判断する際は、従来の様に年齢軸で判断するのではなく、デジタル機器所有率とデジタルメディアへの接触率が決め手になるようです。
有望顧客の設定は年齢でなく、デジタル機器とデジタルメディアの利用頻度で行う!
デジタル機器やデジタルメディアを使いこなす「デジタルシニア」が存在する一方で、40代~50代でデジタル機器を好まない中年層が存在しています。年齢だけで生活者の特性を区分けしてしまうと判断を誤ります。変化を好まず、これまでに慣れ親しんだ生活習慣を変えたくないというデジタル落人は現役世代にも存在しているからです。
デジタル機器とデジタルメディアの需要性と利用頻度が、生活者の行動を大きく変えつつあります。
65歳以上の高齢者がいる世帯は、世帯数が2,580万9千世帯と、全世帯(5,191万4千世帯)の49.7%を占め(「令和5年版高齢社会白書」2021年時点)、総人口に占める高齢者の割合は約3割ですが、世帯別では半数が高齢者世帯です。未婚率と熟年離婚率が上昇しているため単身の高齢者が増加しており、今後は若い世代や現役世代でも単独世帯が増えていくと予想されています。
高齢化が進む日本で活動的で消費意欲も高いシニアとは、デジタルデバイスやデジタルメディアを使いこなしている「デジタルシニア」です。
デジタルシニアの人口はおよそ2,222万人以上と推計され、これは60代以上の高齢者人口である4,357万人(60代:1,533万人 70代:1,638万人 80代以上:1,185万人)のおよそ半分に該当します。この市場規模は台湾(人口は約2300万人)の規模に匹敵します。
デジタル機器の保有割合を年代別に見ると、スマートフォンやPC、タブレット端末のいずれも80代になると保有率が一気に下がり、どのデバイスも持たない人の割合は34.5%になりますから、デジタルシニアは70代までということになります。
デジタルシニアのメディア接触状況は、地上波でNHKのニュースを視聴するものの、20時以降はYouTubeを観ています。
またLINE、Google検索、Yahoo!検索、YouTubeでは、PC保有、スマートフォン保有のデジタルシニアでは利用率が高まり、LINEでPC保有者では76.3%、スマートオフォン保有者では64.7%です。Google検索は利用率が約3割で推定利用人口1,324万人、Yahoo!検索では利用率26.1%、推定利用人口は1,137万人になります。
デジタルシニアは非デジタルシニアに比べて可処分所得があり、人間関係が豊かで、外出する頻度や旅行やスポーツを行う傾向が高くなっています。そのため消費機会が多くなることが予想できます。
どんな高齢者が積極的に消費活動をするかを判断する際には、従来の様に年齢軸で判断するのではなく、デジタル機器の所有率とデジタルメディアへの接触率が決め手になるようです。
参考文献:シニアでくくるな (日経BP社)