マーケティングのジレンマ・・No.2 98%の人を捨て、2%の人に絞り込む
顧客を増やそうと万人を相手にすると、誰からも相手にされなくなる。強力なサポーターを持つ強い企業になるには、顧客を絞り込むことだ。
「顧客を絞り込むと、顧客が減ってしまう」と考えている企業がある。だがその考えでは、誰も顧客になってくれないことに気付いていない。
個性を発揮したければ、自社を最も愛してくれている顧客の声だけを聴く
購入してくれないその他大勢の意見を聞くと、没個性になるだけだ
トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、さらに輸入車メーカーが競い合う自動車市場で、マツダは競合他社と同様に、「誰もが欲しがるクルマ」を模索したため、同社の存在感は希薄化していた。
そこでマツダが採用したのが「シェア2%戦略」だ。
市場シェアの2%と聞くと僅かな数字に見えるが、マツダにとっては高い目標だ。というのも世界の車市場における新車の販売総数は年間におよそ1億台で、マツダの2019年3月期の世界販売台数は156万1千台(マツダの2019年3月期業績発表より)で、世界シェアの1.56%)に過ぎないからだ。
マツダは98%の不特定多数の顧客ではなく、世界でマツダを愛してくれる2%の人たちだけに絞り込み、クルマづくりについても「2%戦略」を実践した。
一般的に自動車メーカーが新製品開発を行なう際は、定量調査(数百から数千のサンプルを対象にアンケート調査を行う)と定性調査(5~6名を1グループとして、6~10グループ程度のフォーカスグループインタビューが多い)を行うことが一般的だ。また自動車メーカーは、発売前の新車を一般の生活者に見せてその評価を聞く「クリニック調査」も行う。
だがマツダは『主力セダン「アテンザ」の新型車開発を前に、世界から5人の熱狂的なアテンザファンを選び、わずか5人のヒアリングから着想を得ようとした(2015年4月20日日経MJより)』。
マツダのカーデザイナーはこの熱烈なファンの考えを踏まえ、その考えに共鳴する2%の人たちの支持を集めることに注力した。そしてこの取組みによって登場したのがCX-5だ。これ以降マツダ車は市場と顧客を絞り込み、その存在感を増すようになって来た。
すべての人たちから支持され、愛されたいと行動しているのに、そうなっていない企業は多い。この事例は、そんな企業への反面教師だ。