マーケティングのジレンマ・・・No.24 「職業に貴賤なく、稼ぎ方に貴賤あり」
「職業に貴賤なし」という意味の裏には、「職業に貴賤なく、稼ぎ方に貴賤あり」という真意が内在しています。これはマーケティングを、「儲けティング」としてしか捉えず、またそのようにしか使えない企業や人にも共通する指摘です。
「職業に貴賤なく、稼ぎ方に貴賤あり」
マーケティングを広告や調査という狭義の方法論と誤解したり、「儲けティング」の手法だと勘違いしている人を時々目にします。マーケティングのサイエンスを間違った概念と手法で使う人がいるからですが、こうした方法でマーケティングを使う企業が永続することはありません。今回のCOVID-19では、マスクや消毒用アルコールなどを高額で転売する法人や個人がAmazonやメルカリなどのECに溢れたのが最たる事例です。人の弱みにつけこむこうした行為に手を染める組織や法人が、支持を受けるはずがないからです。
渋沢栄一は著書『論語と算盤(そろばん)』で「ビジネスは道義にのっとって為すべきである」と、経営哲学を説きました。同時に「金儲けと道徳は相反するように受け入れられているが、それは間違いである」とも指摘しています。相反するように見える事柄を結び付け、相互にメリットのある関係にすることが大事だという考え方です。
私たちが「二者択一」という思考にとらわれると、「得をする人間」と「損をする人間」、「成功する人間」と「落後する人間」、「幸せになる人間」と「不幸になる人間」とに分類され、ゼロサムになってしまいます。渋沢は富や地位を求めることは人間の自然な欲求であり、決して悪いことではなく、まっとうな生き方によってそれがもたらされるなら、進んでそれを求めるべきだと説きました。しかし自分さえよければそれでいいという生き方は、豊かさが社会全体に生き渡ることはなく、結果として自分も不利益をこうむってしまいます。
「職業に貴賤なし」という意味の裏には、「職業に貴賤なく、稼ぎ方に貴賤あり」という真意が内在しているのです。これはマーケティングを、「儲けティング」としてしか捉えず、またそのようにしか使えない企業や人にも共通する指摘です。
参考文献:『渋沢栄一「運」を拓く思考法』青志社