コラム

交友関係が広い人が実践している「密かな努力」

自己紹介の段階から、抜かりなし!

掲載URL:https://president.jp/articles/-/26820

コラム プレジデントオンライン

どれだけ高い能力を持っていても、また、どれだけ人物的な魅力を備えていても、自分を引き立ててくれる人やチャンスを与えてくれる人との出会いがなければ、多くの場合は、埋もれてしまう。交友関係を広げる中で、キーパーソンと出会い、その出会いを発展させるためには、どうすればよいのか――。

すぐ仲良くなれる人=会話がうまい人、じゃない

仕事に役立つ人との出会いを増やそうと異業種交流会や勉強会に参加すれば、経営者やビジネスパーソンとの出会いは生まれ、名刺の数は増えていく。もらった名刺が増えたからといって、出会った人たちと交流が深まるかといえば、ほぼそうはならない。この傾向は経営者からビジネスパーソンまで共通している。一方、年齢を問わず、絶えず人との出会いが生まれ、互いに助け合う関係をつくれる人がいる。この差は、どこで生まれるのか。

多様な人たちが集うパーティや異業種交流会で、初対面でも話が弾み、仲良くなれる人がいる。こうした人たちは、会話がうまいと思われている。しかし、小手先の対応で、大人たちが心を開くわけがない。なぜ彼らの話は盛り上がり、いつまでも会話が続くのか。それは、事前に相手の情報を集め、会話に生かしているからだ。懇意になりたい人が出席することがわかれば、事前にネットで検索し、その人の情報を集める。相手は、興味を持たれていることに気づき、話が弾む。

初対面の人の情報を、SNSで調べよう

相手のことを調べるためにネット検索する際は、
・その人の名前や企業名で検索し、サイトから最新情報を入手する
・企業でどんな仕事に就いているのかを知る
・SNSにアップしている情報や、どんな書き込みをしているかを見る
・SNSで共通の友人を探す
・過去にメディアに取材されたり寄稿したりしていないか、またそのときどんなことを話したり書いたりしているかを調べる
・書籍を出していないか、念のため検索する
・過去に経済団体などで講演し、その講演録がネット上にあがっていないか調べる

このくらいを検索し、相手のことを知っておけば、見知らぬ人であっても会話に窮することはない。

自分のSNSも見られていると思え

自己紹介をするときは、調べた相手の情報を元に、自分と相手とで接点のある話題を見つけ、そのテーマに関連する内容で話す。そうすれば、相手も自分に興味を持ってくれる。ブログやフェイスブックをしている人なら、サイトを見れば、趣味や行きつけのお店、音楽やワインなどの嗜好で共通する話題が見つかるだろう。

相手がこちらの情報を検索することを想定し、自分のサイトをつくるなり、SNSには絶えず情報をアップしておこう。友人同士だけしか通用しないテーマや、情報価値の低いコンテンツをアップするのは、できるだけ避けたい。

相手が年長者の場合、こちらにアピールする情報がなければ、謙虚に助言を受けたいと伝えればいい。大人なら、喜んで若者の相談に乗ってくれる。気をつけたいのは、相手が専門家の場合だ。通常、相談事が有料になる仕事をしている人(弁護士やコンサルタントなど)に、安易に相談しても、答えてもらえないことがある。仕事の相談ならオフィスに連絡してほしいとかわされてしまうこともあるかもしれない。こうしたときは、なぜその専門家の道を選んだのかについてたずねれば、その人なりのエピソードが聞ける。

リアルでなくても、ネットでもつながれる

人と懇意になる方法は、直接会って面識をつくるだけではない。SNSを活用すれば、会ったことがない人でも、ネット上で仲良くなれる。気になる人や面識をつくりたい人がいれば、たとえば、その人のフェイスブックの投稿を定期的にチェックする。その人がどんなことに興味を持ち、どんなコンテンツをアップしているかを把握し、その人が喜ぶ情報をこちらが入手したら知らせるようにする。貴重な情報を提供していれば、友人申請を許諾してくれる確率が高まる。

友人申請をする際には、申請ボタンをポチッとするだけにせず、自己紹介と友人になりたい理由をメッセージで送っておけば、相手の心象はさらによくなる。自己紹介する際も、自分のことだけでなく、入手した相手の情報に触れながら懇意になりたい心情を伝える。友人申請までしなくても、フォローして情報を得る方法もある。

「類は友を呼ぶ」法則にならうと、それなりに活躍している人の周囲には、友人にもそれなりの人が多い。友人たちが書き込んだ内容を見て、興味をひかれた人に友人申請やフォローをする方法もおすすめだ。ひとかどの人物かどうかを見極めるのに、文章の書き方や言葉使いから判断するのも有効だ。能力が高く、魅力のある人は、文章力に長けており、ウイットに富む表現が得意な場合が多い。

せっかく出会った人と、疎遠にならないために

人との縁が生まれても、知り合ってからその後の交流がなければ、すぐに疎遠になる。それを防ぐには、定期的に相手にリマインドする機会を提供することだ。たとえば、

・SNSは、最低でも月に1回は有益なニュースを発信する
・縁のできた人がSNSでニュースを流したら、コメント欄に感想などを書き込む
・相手が書籍を出している人なら、その書籍を自分のブログで紹介したり、オンライン書店にレビューを書き込んだりする(書評の書き方は、自分が書籍を購入したときに参考になった、他人の推薦コメントを参考にすればいい)
・メールで近況を知らせる
・出張先からハガキを送る
・旅先から地元の産品を届ける

負担にならない範囲で、このような対応を続ければ、相手からも連絡が来るようになり、やがて、気兼ねなくやり取りできるようになる。

多くの人たちはフェイスブックなどをしていても、他人の投稿を見ているだけで、情報発信することがほとんどないようだ。アップするコンテンツが思い浮かばないのは、シェアしたくなるニュースに触れていないからだ。

情報を定期的に発信している人は、絶えず情報を探しており、定期的に発信するから文章力や語彙力が身についていく。「いいね」を押しているだけでは、情報収集力や発信力は強くならない。このニュースは、あの人にきっと有益なはずだし、ほかの経営者にも喜ばれるだろう――。こう考えながら、情報を探して、発信してみよう。

自分より若い世代の人と、うまく付き合うには

すでに名を成した年長の人と知り合いになろうとすると、相手にはすでに相当数の知人友人がいて、その中に埋没してしまう可能性が高い。こうした人たちには、前述したリマインドを行いながら、他方で、自分よりも世代の若い才能のある人たちと出会う機会を増やすようにしたい。

相手が自分とはジャンルの異なる仕事をしていたり、異なる専門性を持っていたりする人なら、お互いに有益な情報を交換できる。自分が文科系なら、AIやIT、ロボット、ネットなどにくわしい理系の人と知り合えば、年下の先生になってもらえる。年長者が年下の人に教えを請うと、なぜか相手は好感を持ってくれることが多い。

筆者は、ある交流会の席で、まだ会話も交わしていない人から突然名刺を渡され、こちらの名刺を要求されたことがある。名刺を見ると、その人は歯科医師で、地元の団体の役員も担っていた。名刺交換は強要されるものではなく、話が弾み、今後懇意になりたい場合に交わすものだ。権威主義の人は、名刺交換の場面でも、それが態度に出てしまう。上から目線で名刺を渡したら、懇意になれるわけがない。政治家や著名な経済人のパーティで、よくあるケースだ。

人との縁は、目先の利害や損得だけは成立しない。世代の若い経営者との出会いならなおさらだろう。人に愛され、大事にされる人は、名を成しても、人に謙虚に接するものだ。