コラム

価値のジレンマ・・・・No.25 あの国がアメリカやNATOにゆさぶりをかけ、中東を始め強い発言権を持てる訳

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経済規模では日本の3分の1以下、米国の10分の1以下。GDPは世界11位で、G7各国を始め、インドや韓国を下回っている。そんな国がアメリカやNATOにゆさぶりをかけ、中東を始めとして強い発言権を持っているのはなぜでしょうか。

ロシアが強い発言権を持っている背景には、天然ガスと石油の存在がある。

世界一の国土面積を持つものの、人口は1億4580万5944人(2022年時点 日本の人口は1億2558万4839人)、経済規模では日本の3分の1以下、米国の10分の1以下。GDPは世界11位で、G7各国を始めインドや韓国を下回っている。そんなロシアがアメリカやNATOにゆさぶりをかけ、中東を始めとして強い発言権を持っています。なぜそうできるのでしょうか。背景にあるのが、天然ガスと石油の存在です。

ロシアは天然ガスの輸出量は世界第2位(1位はアメリカ)、石油は世界第3位の地位を占め、国家財政のほぼ半分を石油と天然ガスが支え、それが国力となっています。

EUとロシアは複数の天然ガスパイプラインで結ばれ、中でもウクライナを通るパイプラインは大きなシェアを占めています。EU各国の天然ガス供給に占めるロシアへの依存度を見ると、EU平均では24%。北マケドニア・ボスニア・モルドバ・フィンランド・ラトビアは90%以上を依存し、ブルガリアは77%、ドイツは49%、イタリアが46%と依存度が高くなっています。

今回のロシアの暴挙は政治的にはウクライナの欧州化とNATO加盟の問題ですが、もうひとつ、全世界的に進む再生可能エネルギーへのシフトによる原油価格の動きという経済的問題がからんでいます。欧州各国は再生可能エネルギーの設備が整備されるまでは天然ガスに依存することになり、ロシアにとって天然ガスは最大の交渉材料になります。再生可能エネルギーにシフトしてしまうまで、ロシアは原油価格を高値で安定させ、欧州が天然ガスを購入する長期契約を望んでいます。

中東諸国は石油需要が激減してもこれまで獲得した資金を運用でき、また世界屈指の日照量を誇る中東の強みを生かし、太陽光発電所を整備して水素を製造するという選択肢があります。しかしロシアは天候条件が悪く、太陽光発電の選択肢はありません。またオイルマネーを原資とする政府系ファンドはありますが、ロシア経済を支えるほどの体力はありません。中長期的に見ると、ロシアはウクライナなどの欧州化問題に加え、完全に原油に依存したロシア経済が再生可能エネルギーにシフトすることで国力が低下していくことが最大の懸念材料になるはずです。

画像は、一般社団法人 日本ガス協会「天然ガスの種類」を参考に、富士フイルムがWebマガジン用に作図したものを転載しています。