価値のジレンマ・・・・No.39 ネガティブなメディアの論調に翻弄されず、ポジティブに行動する
2022年イギリスのロイター・ジャーナリズム研究所が実施した『デジタル・ニュース・レポート』によると、世界でニュースを知るためのマスメディア接触はこの10年で低下し続け、あえて報道を避ける傾向が若者を中心に徐々に強まっているようです。調査対象の約半数にあたる21ヶ国でニュースの信頼度は低下し、既存マスメディアの利用頻度は減少しています。日本も10人に1人強は1週間でマスメディアなどからニュースを得ていないという事実があります。
マスメディアは世の中を不安にしても、その責任は取らない
マスメディアはもとよりメディアが運用するオンラインサイトでも、このところ顕著な傾向があります。
・日本は貧しくなった
・この20年収入が増えていない
・日本の国際競争力が過去最低の34位に沈んだ
・生産年齢人口の減少が、日本の国力を削ぐ
・年金だけで暮らせない
こうした論調の記事やコラムを目にすることが増えているように思います。事実は、事実として認識すればいいのですが、その内容はまるで日本はもう先がないように思い込む人が出てくるようで、案じてしまいます。
こうしたコンテンツを書いている人を調べてみると、どんな時代でも社会を批判し、「いかん」「あかん」「許さない」の論調が中心です。また自分たちで何かイノベーションを起こしたり、新たなビジネスを立ち上げて社会を元気にしたりする行動を起こすことはありません。
逆にビジネスの現場で活躍している人が、こうしたネガティブなコンテンツを発信することはまずありません。それは当然で、嘆いていても問題は解決することはなく、また嘆いているより、少しでも前に進めるために、実効性のある施策を考えて実行するからです。
マスメディアは視聴者が関心をもって視聴し、視聴率や購読率が上がるコンテンツを意図的に集めて発信します。マスメディアが運用するオンラインサイトもアクセス数が命ですから、記事やコンテンツに注目を集めるため、編集者は煽情的なタイトル付けを行い、時に著者が書いた中味とはかけ離れたタイトルやキャッチコピーがそこに踊ります。
バブル経済が崩壊した時、経済新聞を始め多くのメディアにはネガティブな論調の記事が長らく続きました。世の中が不安に襲われている時、多くの人たちは先行きの不安感からネガティブな記事やコンテンツに、ついつい触れてしまうからです。
一時的な景気後退の場合、時間が経過すれば景気は上向き、記事の論調は次第にポジティブになっていきます。ところが構造的な問題を抱えた当時の日本に明るい兆しは見えず、ネガティブな論調がいつまでも続いてしまいました。さすがにこれではまずいとなり、論調を前向きにして明るい記事にするように上層部から指示が出て、それ以降悲観的な論調が減っていきました。その背景には、社会の痛みだけが増幅されてしまった反省がありました。
マスメディアは世の中を不安にしても、その責任は取りません。また多くの場合、解決策を自ら考え出して提案することもありません。せいぜい専門家にインタビューして報道する程度です。正しい情報や事実には目を向けて、耳を傾けることは必要です。しかし何らポジティブにならず、人の精神をネガティブにするものに積極的に触れる必要などないはずです。