コラム

価値のジレンマ・・・No.54 私たちはウクライナという国の実態についてあまりに知らずにいる

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コラム リンクトイン

2022年2月、ロシアがウクライナに侵攻し戦争が始まりました。ドネツク、ルハンスク、ハルキウなどロシアの国境に近い東部地域を中心に被害は甚大で、世界銀行などの試算によると2023年2月時点での被害額は1,350億米ドル、日本円で約20兆円にのぼります。さらに復旧・復興にはその3倍の費用がかかるとされています。こうした戦争による被害額以前に、私たちはウクライナという国の実態について理解していないことが多々あることに気づきます。

ウクライナはロシアの侵攻によって、人口の2割に当たる約810万人(愛知県民は約750万人)が国外に避難した

ロシアの侵攻が起きる前から、ウクライナはヨーロッパで最貧国とされる国のひとつでした。仕事を求めて海外に出稼ぎをする人が多く、人口は減少傾向にありました。1994年には5,170万人あったウクライナの人口は、ロシアの侵攻が起きる直前の2022年1月には4,330万人にまで減少していました。出生率の低下に加え、生活のために海外へ出稼ぎに行った人が多かったからです。

それがロシアの侵攻によって人口の2割に当たる約810万人が国外に避難したため、人口減少が加速しました。約810万人とは、約880万人の大阪府民よりは少なく、約750万人の愛知県民よりも多い規模です。ウクライナからの避難民を最も多く受け入れているのは、ポーランドです。その数は沖縄県民に相当する約150万人もの人々が、ポーランドで生活しています。

侵攻が始まった2022年のウクライナのGDPは、前年対比で29.2%も減少しました。さらにウクライナ国内の貧困層(1日の支出が1人当たり6.85米ドル以下で暮らす人たち)が710万人も増加して人口全体の24.1%にも及び、4人に1人が貧困層に該当しています。

2023年2月、国連総会がロシアに対して「即時、完全かつ無条件の撤退」を要求した決議案に賛成したのは、193ヶ国の国連構成国のうち141ヶ国でした。その一方、ロシアはもとより、ベラルーシ、北朝鮮、エリトリア、マリ、ニカラグア、シリアの7カ国は反対票を投じ、中国やインド、アフリカ各国を中心に32ヶ国は棄権票を投じ、13ヶ国は投票しませんでした。

ロシアに経済制裁を課している国は、世界の4分の1でしかありません。インドや中国は経済制裁ではなく、ロシアから安価に石油を購入しています。 ロシアによるウクライナ侵攻は、こうした各国の立ち位置の違いを浮き彫りにしました。

 

出典:ウクライナと世界の未来と私たち powered by JICA