価値のジレンマ・・・No.63 クワイエット・ラグジュアリーという見せびらかさないトレンド
パンデミックや世界的なインフレ、SNSやファストファッションへの疲れなどが重なり、ロゴを見せつけるあからさまなステータスの誇示や、注目されるための派手なデザインは勢いを失い始め、そこにクワイエット・ラグジュアリーというコンセプトが登場しました。
人に見せびらかしたり、自慢したりすることをよしとしないコンセプト
2023年秋冬から注目されるようになった“クワイエット・ラグジュアリー(Quiet Luxury)”とは、「静かな」「控えめな」ラグジュアリー(贅沢)という意味で、派手なデザインやブランドロゴを前面に出すのではなく、上質な素材や色・柄などによる、上品な装いを指します。ハイブランドのブランドロゴを人に見せびらかしたり、自慢したりすることをよしとしないこのコンセプトは、海外の富裕層に支持され始めています。
クワイエット・ラグジュアリーにはブランドロゴはなく、一目で上質と分かる素材、控えめながらベーシックで上品なデザインに仕上がっています。ラグジュアリーブランドには定番としてそのようなアイテムがもともと存在していましたが、それが改めて注目を集めているという面もあります。
Instagramに代表されるSNSの利用者が増え、ブランドロゴや派手なファッションが「インスタ映え」することからこれまでは人気を集め、ファストファッションメーカーは頻繁にトレンドを創り出してきました。
そうした中で起きたパンデミックや世界的なインフレ、SNSやファストファッションへの疲れなどが重なり、ロゴを見せつけるあからさまなステータスの誇示や、注目されるための派手なデザインは勢いを失い始めています。「良いものを使い続ける」「流行に左右されない魅力を持ったアイテムを選ぶ」といった消費行動が表面化を始めたこともうなずけます。
ファッショントレンドは振り子のように振れ、流行と定番を行き来します。クワイエット・ラグジュアリーの流れは、日本でも支持を得るでしょうか。