コラム

価値のジレンマ・・・No.65 「自動車の型式指定申請での不正」で、古い基準のままメーカーに検査させてきた国土交通省と誤解を生むマスメディアの報道

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地上波テレビを始めとするマスコミによる「自動車の型式指定申請での不正」関連の報道は、事実が正しく報道されていないことがわかりました。より厳しい海外の基準でメーカーが試験を実施しても、基準の緩い日本のルールで検査していなければ形式的に違反にされていたりするのです。

マスコミの一連の報道内容は、事実が正しく報道されていない!

「自動車の型式指定申請での不正」がトヨタ自動車を始めマツダ、ヤマハ発動、ホンダ、スズキの各社で行われ、国交省はこの5社に対して立ち入り検査を行い、不正行為の事実関係や不正行為のあった車種の基準適合性を確認すると報道されました。

多くのマスコミは具体的な検査内容や検査の詳細には触れず、不正行為があり国交省の立ち入り検査が行われたことだけを強調した報道がされました。またニューヨーク・タイムズからは、「日本製品には優れたものづくりに支えられた高い品質が備わっているとの捉え方が長らくなされてきたが、こうした不正事例が相次いでいる中で、そのような考え方は変化し始めているかもしれない」などと報じました。

こうしたマスコミの一連の報道内容を調べてみたところ、事実が正しく報道されていないことがわかりました。

トヨタ自動車の場合は、6月4日に「型式指定申請における調査結果について」というプレスリリースが出されていますが、その内容を見るとマスメディアが報道しない事実が記載されていました。(ご存じだと思いますが、トヨタ自動車は自社の情報が正しく報道されないことや偏向報道が頻発することから、オウンドメディアとしてトヨタイムズを発信しています)

例えば「人間との衝突のインパクトを試験するために、人体に見立てた鉄球を衝突させる際に、欧州基準のより厳しい65度の衝撃角で試験していた。日本基準は50度なので、より厳しい欧州基準のデータでクリアしていれば問題はないが、日本のルールには形式的には違反していることになる」とあります。

また「衝突試験の際に、日本基準の1,100キロより重い1,800キロの評価用台車を使用し、より大きな衝撃で評価した。当然、安全性は確認できたが、日本ルールには違反したことになる」とあります。この衝突試験は、アメリカでは大きなピックアップトラックとの衝突も想定し、より安全性を重視したテストをトヨタは行った訳ですが、1,800キロの車をぶつけて実験をしながら、1100キロの車をぶつけて油漏れを起こさなかったと記したのは、国の基準とは異なるため虚偽記載に当たるとして「不正」にされたわけです。

「より厳しい条件で試験しているので、安全性は確認」できるので、「クルマを回収したり、再整備したりする必要はない」のですが、「国交省が定めた日本ルールには合致していない」ので、違反となっているわけです。

我が国の行政は、世界各国での型式指定の基準を「統一する」よう、官民で協力して動いてきた経緯があります。ところが世界がより厳しい基準に動いていたのに、国土交通省は古い基準のままメーカーに検査させてきたわけです。

さらに今回のマスメディアの報道は極めて表面的で、詳細を伝えることなく、受け手に誤解を生じさせるニュース内容になっています。マスコミは意図的な切り取り報道を止め、事実を正確に報道すべきだと思います。皆さんはこの点をどう考えていらっしゃるでしょうか。