価値のジレンマ・・・No.68 世界から賞賛される日本なのに、過去を引きずる残念な習慣

「世界第3位の経済大国」「平和で豊かな国、世界一の長寿、世界一低い殺人率、政治的対立の少なさ、強力なパスポート、世界一の高速鉄道網の新幹線」と日本は賞賛される一方で、日本社会に今だに残る非効率性が指摘されています。長年続けている非効率的な取組みとは何でしょうか。
日本がかつては未来を象徴する国だったが、現在は過去の慣習や技術に縛られている!?
イギリスBBC東京特派員のルパート・ウィングフィールド・ヘイズ記者が執筆した「日本は未来だったが、過去から抜け出せずにいる」というタイトルの記事で、「日本がかつては未来を象徴する国だったが、現在は過去の慣習や技術に縛られている」と指摘しています。
記事中で「ここは世界第3位の経済大国」「平和で豊かな国で、世界一の長寿、世界一低い殺人率、政治的対立の少なさ、強力なパスポート、世界一の高速鉄道網の新幹線がある」と日本を賞賛してくれている一方で、日本社会に今だに残る非効率性を指摘しています。
引用されている事例は、免許の更新手続きです。アメリカやイギリスにも免許の更新手続きはありますが、高齢者や違反者を除き、多くは免許センターへ出向く必要はなく、州によりますがオンラインや郵送での手続きが可能です。また基本的に講習を受ける必要はありません。それが日本では免許センターへ出向くことが義務付けられ、優良運転者なら30分、一般運転者は1時間の講習を受けることになっています。
この事例に限らず、日本では新たな技術への移行が遅れている面があります。官公庁で最近まで使用されていたフロッピーディスク、ハンコ、名刺や企業情報に記載されているFAX番号などが好例です。
卑近な事例としては保健所でのFAX対応です。コロナ禍以前は、感染症が発生すると医療機関は紙に書いた発生届をFAXで保健所に送る仕組みになっていました。そのためコロナ禍では、FAXによる紙情報が大量に送られたため、パソコンにデータ入力する作業で現場が忙殺されました。国は2020年5月に医師らに直接、患者情報を入力してもらう「HRR-SYS(ハーシス)」を立ち上げました。しかし当初は使い勝手が悪く、普及するには相当な時間が掛かりました。
中高年層の管理職層を中心に、日本は慣れた仕組みを変えることを嫌う傾向があります。私たちの周囲では当たり前だと思い込んでいることが、実はとても非効率で労働生産性が低い取組みが存在しています。コロナ禍をきっかけにテレワークが推進されると思っていたら、どんな業務もリアルの出社に戻してしまった企業も存在します。
変えることがすべて良いとは限りません。しかし少なくとも非効率で労働生産性が低い取組みは早急に見直す必要があります。