価値のジレンマ・・・No.69 スイスに富裕層が暮らす最大の理由

日本の相続税率は最高で55%と、税率では世界トップクラスで、2022年段階で日本の最高相続税率はOECD(経済協力開発機構)加盟国のうちNo. 1でした。その一方、スイスやアメリカに富裕層が集まる理由が、相続税率にありました。
相続金額と税率に関して、日本とは比較にならないレベルの国が存在している
スイスは世界の富裕層に手厚い国として、そのメリットは一部の人には知られていました。
「資産の運用」「ファミリーの繁栄」「事業の成功」という3つの側面から、顧客とその家族の未来のために最善を尽くすことを存在意義とし、また使命としているウェルスマネジメントの最大手であるUBSグループの本拠地がスイスにあるのもうなずけます。
スイスでは連邦レベルで相続税はありません。また一部の州では相続税が課されますが、ほとんどのケースで配偶者と子供は免除されます。子孫に課税される場合も、多額の非課税分を差し引くことができ、実質税率は3.5%を超えることはありません。これは非常に大きなメリットです。
ちなみに日本では基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)がありますが、相続税の税率は1000万円までは10%、3000万円までは15%、5000万円までは20%、1億円までは30%、2億円までは40%、3億円までは45%、6億円までは50%、6億円を超えると55%の税率になり、世界と比較して非常に高い税率になっています。
参考までにアメリカでは、1,118万ドル(日本円147円換算で16億4,346万円)の基礎控除が認められており、配偶者にアメリカの市民権があれば基礎控除に関係なく非課税です。アメリカでは遺産税が発生するのは限られた富裕層だけです。ただし州によって基礎控除額や税率が設けられている場合がありますから、州によっては変わってきます。
スイスには現在、世界の富裕者上位500人のうち22人が暮らしており(ブルームバーグ・ビリオネア指数による)、国内の高級リゾート地には富裕層の姿を見ることができます。
そんなスイスでは現在85億円超える相続に税率を50%にするという議論が行われており、2024年段階で約2年後に国民投票が行われる見通しです。相続金額と税率に関して、日本とは比較にならないレベルの国が存在していることを思い知らされます。