価値のジレンマ・・・No.70 徴兵制ではないのに、アメリカで軍隊に志願する若者が多い理由

実際に戦場に出向くこともあるアメリカの軍隊。にもかかわらず入隊する若者が多いのはなぜなのでしょうか。そこには「経済的徴兵制」あるいは「貧困徴兵制」と呼ばれる仕組みが存在していました。
若者たちが軍隊へ志願する最大の理由は「大学に進学するため」
アメリカはベトナム戦争までは徴兵制でしたが、ベトナム戦争終了後に志願制に切り替わりました。志願制は自分の意思で軍隊に応募し、入隊します。実際に戦地に出向くこともあるアメリカの軍隊に、入隊する若者が多いのはなぜなのでしょうか。その最大の理由は、経済的な事情です。アメリカでは軍で何年か務めると奨学金が支給され、その奨学金で大学に進学する人が多いのです。つまり軍隊へ志願する最大の理由は「大学に進学するため」です。
自力では大学に行けない低所得層の若者たちを対象に、経済的メリットをアピールして兵隊を募集していることを、アメリカでは「経済的徴兵制」あるいは「貧困徴兵制」と呼んでいます。
低所得層の若者たちが暮らす地域や学校には、重点的にリクルーターが配置されています。さらにそうしたエリアにある学校は生徒の非行が問題になることがあるため、規律性やチームワークなどを養うため「JROTC(Junior Reserve Officers’Training Corps ジュニア予備役将校訓練課程)」という軍が提供する教育プログラムが行われている場合もあります。
この教育プログラムは生徒の規律性・自立心・リーダーシップ・チームワーク・国家や地域に奉仕する心などを養うカリキュラムで構成されており、受講する人たちは低所得層の割合が高いようです。この教育プログラムはリクルートのためではないと軍側は説明していますが、結果的にそのプログラムを経験した高校生たちは卒業後、軍に入るケースが多いようです。
アメリカで軍隊に入隊するのは、貧困や中流階級から抜け出すための最短の方法のようです。