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優秀な女性社員が辞めてしまう会社の特徴

実は、社長や幹部の言動にうんざり

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コラム プレジデントオンライン
社長の参謀ブログ

経営者や経営幹部の心無い一言、相手の心理をまるで汲み取らないアドバイス、意味のない猥談。それらが引き金となり、男性経営幹部と女性社員との間で関係がギクシャクすることがある。最悪の場合、優秀な女性社員を流出させてしまう。大問題は、男性経営幹部に、まったく自覚がないことだ。

優秀な女性社員の流出が、新たな経営課題

男性は組織に帰属意識を持つが、女性は経営者や上司に帰属意識を持つ傾向が強い。

男性は大企業に所属することへの安心感や会社への愛着、企業の知名度などが帰属意識につながることが多いが、女性は会社や組織よりも上司が尊敬できるか、あるいは上司や経営者が信頼に足るかどうかが帰属意識につながりやすい。

優秀な女性社員が規模の小さいベンチャーや中小企業に懇願されて、大企業から転職するケースをよく目にする。だが、男性の場合は企業の規模や知名度が自分のプライドと重なり、世間の目を意識して、小規模企業に転職することはめずらしい。あるとしても共同経営者のようなオファーを受けた場合だ。

近年、男性よりも女性の方が優秀で、「採用はどうしても女性が多くなる」と人材採用の担当者はよく口にする。人手不足が企業の経営課題である昨今、せっかく採用した社員には存分に力を発揮してほしいと願うのは、どの経営者も同じだ。しかし、些細な出来事で人間関係がギクシャクし、優秀な女性社員が退職してしまうことがある。男性経営者にとって、退職する明確な理由がわからないケースもある。

その原因を探ると、個人の問題ではなく、男女の思考の差、いわゆる男性脳と女性脳の違いに起因することが多い。経営者が男性脳と女性脳の違いを踏まえておけば、女性社員の無用な誤解を避け、退職前に対応できるケースもある。

では、どのような場面で、その違いが現れるのか。いくつかの事例を集めてみた。

A子とは5回。C子とは2回しかランチに行かなかった

社員との交流を目的に、折に触れて社員を昼食に誘って話を聞く経営者がいた。仕事の話だけでなく、家族のことにも耳を傾けるよう心掛けていた。会食を共にすることで、これまでよそよそしかった女性社員とも打ち解けて、話ができ、社内の風通しがよくなったように感じていた。だが、そこに思わぬ誤解が生じていることに、この経営者は気づかずにいた。

若手社員のA子とは、これまで5回昼食に行っていたが、入社5年目のC子とは2回だった。それがえこひいきとしてC子の不信を買ってしまったのだ。しかもこの件は、当の経営者の耳には届かず、相当時間が経ったあとに他の社員から知らされて、彼は驚愕したという。誰を何回誘ったかを正確に記憶しているわけもなく、C子本人が記憶しているというなら、事実だと認めるしかない。この顛末をきっかけに、この経営者は女性社員を昼食に誘うことをやめ、全社員が集まる忘年会などの全社行事で交流を図ることにした。

経営者が気にせず忘れてしまうことでも、女性社員は記憶している。ささいなことだが、経営者が社員を食事などに誘う際には、どの社員にも機会を平等に提供することが必要だった。

結論だけ教えてくれ、という態度を出してしまった

営業部員として、女性が働く企業での出来事だ。長年に渡り仕事をしていた取引先が、他社に乗り換える動きがあった。取引を続けてもらえるように営業課のD子が急遽交渉した。情報をいち早く入手しD子が迅速に対応したことで、幸運にも、従来通り取引できることとなった。結果を待っていた経営者は、営業課長とD子からの報告を聞いた。

「なぜ取引先が今回のような動きを見せたかというと……」

と、D子はプロセスを熱心に話し始めたが、いつまで経っても結論に至らない。経営者はしびれを切らして「D子くん、結論を言ってくれ。結論を」と畳み掛けてしまった。するとD子は「継続してもらえることになりました」と返答し、不機嫌そうに席に戻ってしまった。なりゆきを心配していた経営者は安堵したものの、なぜ急にD子が不機嫌になったのかわからなかった。

男性は話の途中でも結論を聴きたがる傾向が強いが、女性は結論だけでなくプロセスも重視する。これも男性脳と女性脳の違いだ。もし、この経営者が男女の脳の違いを知っていて、「D子くん、お疲れさま。まず結論を教えてくれ。それから見事契約継続に至ったプロセスを聞かせてくれないか?」と切り出していれば、行き違いは防ぐことができ、部下からの信頼も増したはずだ。

「話を聞いてほしい」と言われ、解決策を出してしまった

E子は、ある企業に長年勤務し、経営者からも信頼される総務課長だ。E子から聞いてほしい話があるとメールが入ったので、経営者は時間を割いて面談することにした。

「社長、聞いてください。総務課のY子さんですが、有能で仕事もできる人ですが、人間関係をうまく維持することが苦手で、若手へのOJTが進まず、後任の育成に支障が……」

と、話し始めた。

「聞いてください」と言われた経営者は、てっきり問題が生じ、その解決策を自分に求めに来たと思い込み、「それは困ったな。ではY子さんを別の部署に異動させたほうがいいのか?」と返答した。

するとE子は「社長、そういうことではないのです。部下たちの関係がギクシャクしている総務課の現状をご理解いただきたかっただけで、人事のご相談に来たわけではないのです。貴重なお時間を割いていただき申し訳ありませんでした」と不満そうな顔を見せて戻っていった。総務課長のE子が自分に何を望んでいるかが見えず、この経営者は困惑してしまった。

後日、その行き違いがどこで起きているかを知ることになった。ある日、妻から「ねぇ、ちょっと聞いてくれる?」と切り出されたこの経営者は、何か問題でも起こったかとドキリとし、問題解決をするよう頭を切り替えて話を聞いていた。

「……という事があってね。だからマンションの理事会は上手くいかないのよ」という話の流れになったので、「この機会に理事を退任すればいいんじゃないか」とアドバイスすると「そういうことを言ってるんじゃないの。私が一生懸命取組んでいることをわかってほしかっただけよ。もういいわ。貴方には話さない!」と言われてしまった。

「だったら相談などしなければいいじゃないか……」とつぶやいたものの「そうか。話を聞いてほしいと言われたら、問題を抱えて解決策を求めているのではなく、ただ耳を傾けていればよかったんだ」

と、ことの次第を理解した。

このような行き違いは、会社や家庭で頻繁に起きる。男女間の喧嘩の多くは、男性が問題解決脳なのに対して、女性は共有化脳であることにより起きるのだ。総務課長のE子や妻は、経営者に問題解決を望んでいたのではなく、いかに大変な状態だったのかという心情を共有してほしかっただけなのだ。

女性が男性に「聞いてほしい」と口にしたときは、問題解決を望んでいるのではなく“自分がどんな心情に陥っていたのか。あるいはどんなに大変な状況だったのかを、相手に共有して欲しいだけ”というケースが多い。そんなとき、男性経営者は余計な忠告をせずに耳を傾け、相づちを打てばいいだけだったのだ。

女性社員とのコミュニケーションに注意を払うべきは、経営者だけではない。経営幹部の言動も見過ごせない。いくら経営者が気を配っても、現場のトップが配慮に欠けると、まるで意味がない。そんな事例も紹介しよう。

盛り上げるために猥談を繰り返してしまった

「この前の営業提案はとてもよかった。みんなが気付かずにいた点を指摘してくれて助かったよ」「いつも熱心に取り組んでくれてありがとう」と仕事に熱心な社員に普段からできるだけ声を掛けるように心掛けていた経営者がいた。その会社には、仕事はできるが社内で猥談をして、女性社員からひんしゅくを買うことが多い営業課長がいた。

さらに課長の部下には、非常に聡明な女性社員S子がいた。成績優秀で、経営者もその能力を評価していた。課長は、S子が成果を上げれば、都度ほめていたが、S子はそれほど嬉しそうには見えなかった。一方で、経営者からの何気ない一言には嬉しそうにするS子がいて、さすがに課長も気になっていた。

「S子は、俺が褒めても嬉しそうにしないのに、社長には些細なことを褒められても喜んでいる。どうしてあんなに違うんだろう……」

社長や総務課長の女性と昼食をとっていたとき、営業課長は口にした。すると長年女性社員と交流してきた総務課長から厳しい一言が飛び出した。

「いくら営業手腕があっても、女性の前で猥談をする男性上司が嫌なんですよ。女性社員から尊敬されるよう振舞わないと、他の女性社員からも相手にされなくなりますよ」

場を盛り上げるつもりの猥談がセクハラと受け取られ、人格さえも疑われていたとわかった課長は、相当なショックを受けた。

経営者は「みんな、君が仕事ができる人だと認めている。女性社員が嫌がることはやめて、従来とは違う方法で部下とコミュニケーションをとったほうがいい」と助言した。営業課長は深く反省し、人前で猥談を披露するのをやめた。しばらくして、新人女性社員が配属されS子はそのOJTを任された。それから月日が流れた。

「S子先輩、課長は仕事ができるし部下の話にもよく耳を傾けてくれます。本当に立派ですよね……」

と新人に言われ、確かに課長は昔とは変わったな、とS子も思った。

男性ばかりの職場なら許されても、女性社員が多い企業ではタブーな会話が存在する。女性社員は尊敬できる上司についていく。社内での言動に配慮し、つまらぬ誤解から軽蔑される上司になってはいけない。

女性社員が働きやすい環境を作りたいなら、経営者は自身だけでなく、幹部の行いやその評判にも、目を配っておく必要がある。