副業を認める大企業がちらほら出てきた。一方で、専門性を持った人材が不足している中小企業やベンチャー企業が存在する。大企業ビジネスパーソンが、副業で中小企業やベンチャー企業で活躍できれば言うことないが、話はそうカンタンではない。大企業勤めだからと言って、誰でもいいわけではないからだ。
給料が上げられないから、副業でカバーさせるのが「企業の本音」
いまだに多くの企業が副業を「原則禁止」にしているなか、政府が働き方改革の一環として推進をしたことも影響し、副業を容認する企業が増えてきた。政府が副業解禁に動いたのは「働き方の多様化」はもとより、深刻化する「人手不足」に対応するためだが、企業が副業を認める背景には別の理由がある。
日本企業はこれまで「終身雇用」を前提にした人事制度のため、社員を生かせる仕事がなくなっても、配置転換などで生活を保障してきた。だが時代の変化により省力化できる職種で社員の雇用を続けることは、企業に余裕がなければできなくなってきた。副業を認めることで、本業にも相乗効果が期待できると指摘する企業もあるが、高収益企業でもないかぎり、社員の給与を大幅に引き上げることは難しく、昇給できない分、副業で補うことを認めざるを得なくなった。副業を認める大企業が出てきた。一方で、専門性を持った人材が不足している中小企業やベンチャー企業が存在する。大企業ビジネスパーソンが、副業で中小企業やベンチャー企業で活躍できれば言うことないが、話はそうカンタンではない。大企業勤めだからと言って、誰でもいいわけではないからだ。
専門性を使えるか、使えないかで大きく違う
ビジネスパーソンが副業を探す場合、大きく2つの選択肢がある。
1つ目は、企業に労務を提供して金銭を得る副業だ。カフェや居酒屋・レストランなどでのホールやキッチンのスタッフ職、小売業の販売職、コールセンターの電話応対業務や顧客データの入力業務、宿直や夜間の警備、オフィスや商業施設の清掃業務、夜間のネットカフェ業務などがある。働く人を選ばない反面、それなりの収入を得るには長時間労働を余儀なくされる。また高齢者は、制約を受ける場合もある。
2つ目は、会社の仕事を通じて身につけた専門性を生かして行う副業だ。マーケティングや広報、セールスプロモーション、ウェブマスターやコンテンツ制作、ネット通販の運用や顧客データの活用などといった専門能力を提供する知的ワーカーだ。こうした仕事の場合には、能力と成果に応じた報酬を得る事ができる。実績が評価され、名指しで仕事の依頼が来るような人なら、高収入を得られる。
だが依頼主(クライアント)を見つける営業力と、他者にない専門性や優位性がないと、仕事の依頼はやって来ない。この場合はやはりクラウドソーシングや斡旋企業に登録し、料金面で条件が悪くても、仕事を引き受けざるを得なくなる。
ほかにも、こんな副業がある
上記の2つタイプとは違い、個人事業主として仕事をする方法もある。アクセサリー、服、ぬいぐるみ、インテリア小物などを自分でつくって販売する、いわば趣味を生かしたグッズ販売だ。写真の撮影料、自分が撮影した写真や描いたイラストの販売、モノを仕入れて転売する方法もあるだろう。
ほかには、企業がインターネット上で不特定多数の人に仕事を外注するクラウドソーシングと呼ばれる仕組みを使い、データ入力、記事作成(コラム、ブログ)、音声の文字起こし、映画レビューなどの仕事を紹介してもらい、納品すると報酬を受け取る方法もある。クラウドソーシングには大勢の人たちが登録するので受注料金が安くなりやすく、紹介手数料を登録先に支払うため手取り金額はさらに減ることになる。
クラウドソーシングでは、システム開発、アプリ開発、サイト制作、動画・音楽系コンテンツ制作、イラスト制作、翻訳といった専門性の高い仕事を斡旋するところもあるが、未経験者では精度に不安が残る上に、安価でも手を挙げる人が多いので、仕事の単価は自ずと低くなる。
ビジネスパーソンには、2種類のタイプがある
さて、官公庁や大企業に働くビジネスパーソンは、一定の年数を経るとジョブローテーションによる異動を余儀なくされる。この仕組みは、誰もが管理職に就くことを目指していた時代の名残で、ゼネラリストとしては必要なジョブキャリアだった。この制度では、仕事の内容を理解して仕事ができるようになると異動させられるため、特定の分野に長けたプロフェッショナルが育たない。
その一方、プロと呼ばれる人たちは、自分の適性を生かした職務に留まり、専門性を磨いていく。ジョブローテーションのない中小企業で長年同じ部門に勤務する人や、大企業なら総務や人事、経理、財務、経営企画、広報、デザイン、商品企画、マーケティング、ネットを中心としたコミュニケーションなどの分野で専門性を磨いてきた人たちが該当する。
専門性があっても、稼げない人
日本のビジネスパーソンは専門性を持たないゼネラリストが多く、条件のよい副業に従事できない人が多い上に、自力で仕事先を見つけられないため副業が見つからない。就職や転職する際に、就職情報メディアや転職サイトなどに依存してきた経緯があり、仕事を依頼してくれる企業や組織を自力で見つける手立てを知らずにいる。
仕事が見つけられないのは、専門性がないからだと思い込み、資格取得に時間とお金を投資する人がいる。めでたく資格を取得しても、それで依頼主が殺到するほど世の中は甘くない。難関の国家資格が必要な専門家として、弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士、歯科医師などがあるが、クライアント(顧客)を開拓する営業力を備えていない専門家は経済的に非常に厳しいのが現実だ。
この傾向は資格取得に限らず、退職してラーメン店や蕎麦店などの飲食店を開業したものの顧客が増えず、廃業の憂き目を見る人とも共通している。ラーメンや蕎麦のつくり方を学んでも、顧客をつくる取り組みは眼中にない点だ。
副業で稼げる人になる第一歩
恵まれた条件の副業を見つけるにはどうすればいいか。
それにはまず現在の仕事を通じて能力と専門性を磨き上げ、自分の売り物をつくることだ。今の仕事で専門性や能力を向上できないとしたら、自身の仕事への取り組み方が安易か、仕事が単なる労務の提供レベルにあるということになる。
どんな仕事に就いていても、その仕事について書籍が書けたり、マニュアルを作れたり、さらには自分の仕事について講演できるレベルになるまで取り組めば、専門性は必ず高められる。誰にでもできる仕事であっても、誰にも真似できない仕事に高度化すればいい。
ビジネスパーソンが稼げる副業と出合う視点とその方法
次に副業の依頼主を探す方法だが、給与所得者なら中小企業やベンチャー企業の経営者の知り合いを増やしていくことだ。彼らに出会う方法としては、経営者向けのセミナーや研修会、講演会に参加し、参加した経営者と面識をつくるようにしたい。成長途中にある企業では人材が不足し、社内制度の整備が遅れていることがよくある。また経理や財務、総務といった内勤部門にはエキスパートがおらず、不都合を感じている法人もある。組織営業ができていない企業では、営業マニュアルが整備されておらず、新人営業パーソンの育成に苦労している。
出会った経営者が抱えている課題を解決するために、自分は何ができるかを考え、それを副業として支援できることを提案し、当初は就業後や週末にアルバイトとして働いてみればいい。互いに相性が良ければ、長く付き合える。
その人がどんな副業に就くかを見れば、これまでどのように仕事をしてきたかが明らかになる。収入を得るためにしかたなく働いてきた人には、しかたのない副業にしか出合えない。主体的に仕事に取り組み、専門性と独自性を磨いてきた人なら、請われる仕事に出合えるはずだ。出合った副業は、定年退職後にどう生きていくかをも決定づける。その人の価値を測るには、どんな副業を選んだかを見ればわかる。現役時代に出合った副業が、定年退職後の本業になる可能性を秘めていることを、多くの人たちは気付いていない。